アレクセイ 己のルーツに頓着なく
よく人から先祖の畑を残してもらえていることに対し、僻まれたり羨ましがられたりするのだが、その者達は根本的にわかっていないことがある。
その残してくれた畑や土地はただ漠然とある訳ではないのだ。
侍従の先祖がまだ機械もない時代、鬱蒼とした森林の中を僅かな食糧と極寒の地の中で歯を食いしばって切り開き開墾して残してくれたお陰で今の自分があるのである。
アレク:爺、これは何じゃ?

侍従 :これは、爺の先祖が着の身着のままこの地に入植し、筆舌尽くし難い思いを
してこの地をここまで切り開いて行った者達のそれはそれは凄まじい開拓の
歴史書なのでございますよ殿下。
アレク:これがにょう。

侍従 :この爺のルーツの記録と言っても過言ではありませぬ。
爺にとっては旧約聖書と並ぶくらいのそれは大事な歴史書なのでございます。
アレク:兄上は既に読んでおるにょか?

ニコ :皇帝たる朕に於いてはこの地の歴史を研究せしむる者は、郷土を愛する心を
養成し、朕の帝国が他国に破られざるの国たる信念を固定せしむるを主とし
たりじゃ、皇太子。

アレク:兄上の言っていることはわしには難しくてようわからにゅ。

今はわからくともいいのだ、アレクセイよ。
どんなに自分が成り上がろうとも落ちぶれようとも自分のルーツをしっかり知っていれば決して思いあがることもなく、必要以上に卑屈になることもなくお天道様に堂々と胸を張って生きていけるのだ。
侍従が従兄弟たちの農作業を手伝うのも全てはここに端を発するのである。
嗚呼、今回は哲学だ。
(どこがじゃ!!)
ポチっとされたし

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